2019年08月12日

沖縄県外の戦争遺跡 116

北海道根室市 海軍 根室特設見張所 中篇
根室半島の南岸、太平洋に臨む岬角
 夏草に埋もれる望楼の基礎と建屋の土塁

厚岸防備隊の戦時日誌に拠れば、根室特設見張所(戊)は昭和19年12月に運用を開始している。

根室半島、及び附近には、地理的な環境から、戦前より無線施設が多数設置されていた。 明治41年、逓信省は船舶向けに落石無線送・受信所を開局。 その後、昭和10年頃から海軍は門静送信所、筑紫恋受信所(厚岸)、花咲送・受信所、西和田送信所を設置し、何れも大湊通信隊 根室分遣隊が所管していた。 主な任務は艦隊との送受信、及び傍受であったと考えられる。 この道東の地に風雲急を告げる事態が発生したのは、昭和19年3月16日の事であった。

同日夕刻、釧路港を出港した輸送船 4杯、護衛の駆逐艦 3杯(第9駆逐隊)の船団は、千島を目指し霧の厚岸沖を東航していた。 輸送船には千島の防備強化のため、第42師団の将兵が乗船し重要な軍事機密であった。 しかし夕刻、跳梁する敵潜はレーダーにより船団を発見する。 敵潜の雷撃を受け20時30分頃に日連丸、続いて23時30分頃、白雲が沈没、殆どの将兵が愛冠岬沖の水底に沈んだ。

斯様な背景の直後、厚岸防備部隊は大湊警備府の隷下、昭和19年6月に開隊される。 本部を厚岸 筑紫恋(つくしこい)に置き、大佐の司令以下、約700名の将兵で編制されていた。 装備は、掃海艇に13ミリ機銃と爆雷を搭載した特設駆潜艇による対潜哨戒、陸上の対空警戒レーダーによる上空哨戒、及び高角砲、機銃による防空が主任務であった。

 根室特設見張所望楼跡
望楼跡の基礎のみが、判然とする見張所の遺構として伝わる。
この基礎を取り囲み上部にガラス張りの小屋掛けを施し、厳冬にも耐え得る望楼(見張り台)としたと云われる。
沖縄県外の戦争遺跡 116

 望楼基礎
概寸は高さ2.4メートル、直径は上部3.6メートル、下部2.3メートル、内径は1.3メートルで昇降用の足掛けが設けられている。
基体には多くのボルトが埋設され、取り囲むように小さなコンクリート製台座が足下に設けられているが、往時の意匠は明らかでない。
沖縄県外の戦争遺跡 116

※地図は 沖縄県外の戦争遺跡 115 追記をご覧下さい※


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